2013年3月24日日曜日

インテリジェント・タイヤセンサー (Intelligent Tire Sensors)



 タイヤメーカーのコンチネンタルが新しいセンサー技術を開発した。現在高級車を中心にタイヤに空気圧センサーを装着するのがトレンドになっているが、今回発表された技術は、そのもう一歩先を行く。コンチネンタルの発表資料はこちら

それはどういう仕組みか?

新しいセンサーはタイヤ内部に設けられ、常時タイヤの変形を感知することによって「タイヤの荷重状態」を判定するというもの。トレッド下に埋め込まれたセンサーがトレッドの変形を感知し、それによってタイヤの接地面の大きさを推定するという仕組みだ。
 タイヤの空気圧は既存の空気圧センサーで測定されているから、そこに接地面サイズの情報が加われば、そのタイヤに掛かっている実荷重が演算できるというわけだ。

その御利益は…

実荷重がリアルタイムに判ると何が良いのか?まず、積載状態が変わった場合に、適正空気圧に調整する目安になる。これは安全面でもエコ性能でも有益。
 さらに各輪の実荷重が判るということは、ABSやESCをより性格に制御するための情報にもなる。例えばABSの1機能であるEBDは、前後輪のホイールスピードセンサー情報によってブレーキ配分を変えるのだが、実はコレには制約がある。それは通常のEBDは「ブレーキを掛け、減速が始まってからブレーキ配分を加減する」もので、最初からその時の前後荷重に合わせた配分でブレーキを掛けるわけではない。それがこの新しいセンサーを活用すれば、最初から最適なブレーキ配分で制動開始できることになる。これは制動距離短縮におおいに貢献することが期待される。
 また従来、ESCは基本的に規定の積載状態(定員乗車)を前提にチューニングされているが、この新型センサーを活用すれば、多様な積載状態に応じた制御も可能になるので、安全性の向上が見込まれる。

オフロードでも活躍しそうだ

オフローダーにとっても御利益はありそうだ。タイヤの実荷重が判るということは、トラコンや可変駆動力配分の電子制御がより緻密できる。例えばこのセンサーによって「接地荷重ゼロ」や「急激な荷重の減少」を判定し、それを加味したブレーキ・トラコンの制御を行えばトラクションコントロールはより効果的になる。
 今のところ庶民のクルマには空気圧センサーすら付いてないわけだけど、夢は膨らむ。まあ、空気圧チェックはマメにやりましょう。こういう技術が開発されるほど、空気圧というものはクルマの走行性能に大きく影響するものだから。

2013年3月21日木曜日

OTCはブライドルの活用を推進します


 OTCのレスキュー講座には、リギングにブライドルを活用する手法も含まれます。なぜならブライドルは、より困難な状況を克服し、スムースかつ安全なレスキューを実践するのに欠かせない技術だからです。
 先日ブライドルについての記事をポストしましたが、ほとんどのオフローダーにとってブライドルとは耳慣れない言葉だったと思います。というのも私も数々のオフロード雑誌にレスキュー関連の記事を書いてきたわけですが、雑誌記事というのは初心者向けの内容が望まれるのが常で、より高度なテクニックについて書く機会はなかったのです。
 ブライドルの力学自体は、職業的にクレーンやウインチを使う人はよくご存知のものです。ただしOTCで教えるブライドルのテクニックは、そういう基礎知識だけでなく、現実のオフロード・レスキューで遭遇する諸問題を解決するためのノウハウを盛り込んだ極めて実戦的なものなのです。
 ブライドルはその名のとおり、まさに手綱でウマを駆るように、自在に力の向きを操るものです。ブライドルをマスターすれば、リギングを組んでのレスキューは遙かにスムースなります。またアンカーを取れるポイントと引きたい方向がマッチしないという問題も解消できます。さらにウインチを使う場合には、ケーブルの乱巻きやジャムを起こさない安全な作業が可能になります。
 当ブログでは「ブライドルの力学」「アンカーとブライドルの関係」そして「ブライドルのリギング」というようなテーマでの連載を予定していますのでお楽しみに。

2013年3月19日火曜日

オーガ(Auger)ってなんだ?

この前Lan-carの話をポストしたら、その中に出てくるオーガって何?と聞かれたので、簡単に説明しておきたい。

オーガ(Auger)というのは、穴を穿つものという語源を持ち、一般に木工用のキリや土木用のドリルの呼び名として使われる言葉だ。

Lan-carはもともと農業分野での道具として生まれたグラウンドアンカーをオフロード用にモディファイしたものだから、オーガという言い方になっている。

ただグラウンドアンカーでは、その先端のスクリュー部分は穴を穿つ形状ではなくて、木ネジのように「ねじ込んで支持力を得る」ための形になっている。

だからオーガというよりは、立て込みネジもしくはスクリュー(Screw)と表現する方が科学的だとは思う。

ドリルやキリがその先端が対象物を削り取る構造であるのに対し、立て込みネジでは先端が対象物を出来るだけ破壊せずに食い込むことを目的に設計される。

だからこういうタイプのグラウンドアンカーは分類上の呼び名も、オーガ式というよりスクリュー式とかヘリカル式、あるいは簡単にネジ式という方が合理的かなとも思う。

まあ、用語というものは、慣例に習うべきものだから、とりあえず今のところは先人に敬意を表してオーガ式でいいかというような判断にしている。

2013年3月17日日曜日

Bridle(ブライドル)ってなに?

先日インプス店長のブログを見ていたら、 何やらブライドルと名の付く新製品が入荷するという話題があった。この件については店長のブログにコメントをいれて置いた。

少し気になったので、今回はそのブライドルとは一体何か?という話をしたい。

ブライドルというのは乗馬用の馬具で、馬の頭部に装着する「おもがい」「くつわ」「手綱」などを合わせた総称。つまり手綱で馬の進む方向を定めるための装具のことだ。

四駆に関係のある分野では、ロープワークやリギングでブライドルという言葉が登場する。こちらでは「ロープの両端を対象物に繋ぎ、ロープの中間部を使って力を加える」という取り回し方をブライドルという。

実際の例としては、牽引の際に大きな力を分散する目的で、左右の牽引フックを短いロープやチョーカーチェーンで繋ぎ、そこに牽引ロープを装着するY字状のリギングを作ったりするが、これをブライドルというのだ。

注意しなくてはならないのは、ブライドルは確かに力を分散してクルマのフレームなどを守効果はあるが、適切なリギングをしないと逆にフレームや牽引フック周りに深刻なダメージを与えてしまうこともある。

OTC受講者ならブライドルの3点に掛かる力とそのベクトルは三角関数で計算できることに既にお気づきのはず。そうです、短過ぎるブライドルはフレームエンドを締め付ける方向に大きなストレスを生むのだ。

困ったことに、どんなスタックもキネティックロープで思いっきり勢いをつけて引っ張ればレスキューできると思い込んでるような初心者にかぎって、ブライドルで左右のフックに荷重を分散してやれば安心だと考えていることが多い。

本当にヘビーなスタックでは、キネティックリカバリーはクルマにも人にもとても危険。ヘビーなリカバリーはスナッチブロックを使って減速リギングをすべきだ。ゆっくり、必要最小限の力で引くことが何より重要だ。そういう場合にもブライドルは長いものを使用し、フレームエンドを守らなくてはならない。

OTCのリカバリー講習ではブライドルはこれとは違った用途に使用することを教えることにしている。実はブライドルはアンカー配置を自在に設定するという非常に役に立つ使い方があるのだ。こちらは是非講習で体験して欲しい。

2013年3月16日土曜日

Lan-car 最強のグラウンドアンカー

Lan-carは僅か9kg、コンパクトに収納できる


 IMPSにLan-carが入荷した。Lan-carというのはオーガ式のグラウンドアンカーで、地面にねじ込むことでアンカーの役目を果たすもの。オーガ式のグラウンドアンカーは路面を問わず設置しやすく、かつ支持力が強いという優れた特徴があるのだが、あまりその仕組みや効能が紹介されてこなかったせいで、オフローダーにはまだあまり知られてない製品だ。
使用時はこのようなカタチ
 私は仕事柄色々なタイプのグラウンドアンカーを使ってきたが、最も信頼しているのがオーガ式のアンカーだ。これまで草木の生えていない荒野や広大な砂地など様々な悪条件下で、オーガ式のアンカーには何度も助けられた。
 ウインチ好きなマニア(とりわけウインチ競技の参加者)はPull-Palなどのディグイン型(スコップ式)アンカーの信奉者が多いが、実はアンカーとしての支持力ではオーガ式の方がやや優れている。ディグイン型でオーガ式と同等の支持力を得ようとすると、そのサイズはかなり巨大なものが必要なのだ。
 ウインチ競技者にディグイン型アンカーが好まれている理由は、アンカー設置がスピーディに行えるから。ディグイン型では、スペード(スコップ状の部分)を地面に刺し、後はウインチで引く力で地面に食い込んでいって支持力を得る。この単純さがスピード重視のウインチ競技で好まれる理由だ。ただしウインチで引くことによってアンカーがうまく食い込んでくれるかどうかは、ある意味運任せなのだ。
 このタイプも過去に何度もテストしたが、多くの場合スペードは地面を浅く引っ掻くばかりで、なかなか潜り込んではくれない。スコップのように足で踏み込んだり、アシスタントが体重を掛けたりして補助しても、路面が固かったり、地中に石の多い状況だとまず役に立たない。また地面に上手く潜ってくれても、アンカーとしての支持力は不十分なことも多い。ヘビーなウインチングでは、スペードが完全に地中に入っていてもなお、ウインチによってアンカーがずるずると引きずられてしまうこともある。
 その点オーガ式は地面にねじ込むという作業に時間は掛かるが、少々石混じりな路面であっても、確実に設置できる。さらにその支持力は非常に大きく、ヘビーなウインチングでもアンカーが引きずられるような事態はまず起きない。
 こう書くと、なんとなく釈然としないな、と思う人もいるだろう。なにせディグイン型は広いスペードの面で地面を捉えるのに対し、オーガ式ではそれほど太くないシャフトで力を受けるのだから、荷重の分散という点でディグイン型が有利だと感じるのも無理ない話。でもオーガ式アンカーが強いことは科学的に証明できる。実は土そのものの物理的な特性に秘密があるのだ。
 ほとんどの場合、土は均質ではない。色々なサイズの粒子(シルトや砂粒、小石)が混ざり合い凝集した状態なのだ。そのためスコップで掘るような外力を加えると凝集している構造(これが支持力の元なのだ)が破壊されて脆くなってしまう。ディグイン型アンカーを引っ張って地面に食い込ませることは、畑を農機で耕すようなものであり、土の支持力を奪ってしまうわけだ。
 これに対し、オーガ式アンカーはシャフト先端のオーガ(スクリュー部分)で土に食い込んでいくので、ほとんど土の構造を破壊せずに地中に埋設される。つまり土の構造強度を損なうことなくアンカーを埋めることができるわけだ。
 さらに詳細な仕組みについてはいずれ改めて解説しようと思うが、論より証拠、当ブログではIMPSさんの協力のもと、実際にLan-carの使い勝手を検証し、その支持力の実測値も計測するというテストを予定しているので、そちらのレポートもお楽しみに。

2012年9月1日土曜日

スナッチブロックの語源


 用語の話。普段使ってる用語でも、なぜそういう名前なのか知らないことって、意外に多くないですか?例えばウインチングに使うスナッチブロック(Snatch block)って、なぜスナッチブロックというのか?

 スナッチブロックは日本語だと滑車なわけで、逆に滑車を英訳するとプーリーブロック(Pulley block)となる。じゃあ、スナッチってどういうこと?
 It's snatch ! (そりゃ簡単だ!)っていう言い回しがある。そうスナッチというのは手早く簡単な、という意味。だからスナッチブロックとはプーリーブロックの中でも、簡単便利に使えるタイプのものを指しているわけだ。

 何が簡単便利か?大昔は滑車と言えば木製で、木をくり貫いた枠に軸ところ車を組み込んだ構造だった。だから滑車にロープをセットするには、端からロープを通してやらなくてはならず、手間の掛かるものだったのだ。

 スナッチブロックは大航海時代に広く使われるようになった。帆船は帆を張るのに沢山のロープと滑車を使う。帆船で使用されるロープはとても長いので、途中にいくつもの滑車を使う場合、それをセットするのは大変な作業になる。そこで滑車本体の一部が開いて、ロープの中間部にも素早く簡単にセットできる構造の滑車が使われるようになった。これがスナッチブロックの始まり。

 スナッチブロックは当初、ロープを掛けやすいように本体の一部が開く構造だから、金属製滑車の時代になっても、強度を保つために頑丈な鋳物でできていた。オフロードでのウインチングにもそういう滑車が使われてきたが、80年代にプレス成形された板材で滑車を挟むというシンプルで強度のある構造(シザースタイプという)のものが登場。これがお馴染みのスナッチブロックのカタチの定番になった。

2012年6月6日水曜日

iPhoneアプリ「パノラマ」の撮影テスト

お気に入りのiPhoneアプリ「パノラマ」だが、このアプリは手持ちでもそこそこ使える画像を撮れるので、これまで三脚に乗せて撮影したことがなかった。
で、思い立って三脚撮影をトライしてみた。